【書評】『最高の体調』を読んでみた。
文明が発達したことにより、現代人の体は少しづつ蝕まれている。
そして、僕らが抱える問題の大半は「文明病」が原因である。
そう語るのは、『最高の体調』(鈴木 祐)の著者。
著者は、ヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がけるサイエンスライターで、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演などを行なっている方です。
さて、そもそも文明病とはなんなのでしょう。
典型的な例として「肥満」が挙げられると、著者はいいます。
アメリカ疾病管理センターによれば、1950年代の肥満率は10%を下回るレベルだったのが、2010年代には35%まではね上がっています。さらに1890年代までさかのぼれば、この時代は肥満そのものが珍しかったため、相撲取りなら小結ぐらいの体型でも「異常者」として扱われ、見世物小屋で働かされたとの記録もあるほどです。
ここまで肥満が普通になった理由は、もちろん社会が豊かになったからに他なりません。食料の大量生産と価格の低下により、現代人はかつてないレベルのカロリーを摂取しています。(23ページ)
人類は石器時代から、飢餓に耐えながら生き抜いており、生活する上でお腹が満腹になることはほとんど無かったといいます。
僕らの遺伝子は石器時代から変わっておらず、飢餓には強いが、満腹には弱い。
文明が進み、飽食の時代となった今、僕らは「食べ過ぎる」という、自分たちの遺伝子に沿わない生活をしており、それが肥満という文明病の一つになっています。
この本では、文明病を引き起こす要素を「炎症」と「不安」の2つに分けて語られています。
そして、炎症を解決するために「腸」「環境」「ストレス」、不安を解決するために「価値」「死」「遊び」のそれぞれ3つの視点から、体調を改善するためのガイドラインを示しています。
今回は、炎症を解決するために「腸」について、焦点を当ててみたいと思います。
そもそも「炎症」とは何なのか
人間の体は、なんらかのダメージを受けたとき、免疫システムが働き、修復しようとします。炎症は僕らの体に備わっている防御システムで、生きて行く上で欠かせないものになります。
炎症は、体のどこにでも発生します。
例えば、「関節痛」になれば、ヒザやヒジに炎症が起き、「花粉症」の場合、免疫システムが過剰に働き、目の充血や鼻づまりなどの炎症反応が起きます。
ところが、そういった短期的な症状なら問題はないですが、長期の感染やアレルギーのように炎症が長引くと、免疫システムが激しい戦いを繰り広げるため、血管や細胞などにダメージが及び、全身の機能が下がってしまうといいます。
そして、長期的な炎症を引き起こす原因のひとつに「内臓脂肪」が挙げられます。
人体にとって、内臓脂肪は「異物」でしかありません。そのため私たちの体は、内臓脂肪が増えると免疫システムを動かしはじめ、脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします。
しかし、いくら免疫システムが頑張っても、内臓脂肪ばかりはどうにもなりません。体脂肪を落とすには、食事や運動でカロリーを減らすしかないからです。
内臓脂肪が減らない限り体はジワジワと燃え続け、炎症性物質で傷ついた血管や細胞が動脈硬化や脳梗塞の引き金になります。これが「メタボリックシンドローム」の発祥プロセスです。
現代の日本人は長期的な炎症がメインで発症し、「炎症レベル」が高いと言われています。
それに対し、パプアニューギニアで暮らす狩猟採集民のような、石器時代の人間に近い生活をしている人たちは、短中期的な炎症がメインで「炎症レベル」が低く、慢性的な症状はほとんど無いという調査データがあり、現代人よりも健康的であるといえます。
この炎症レベルが低いほど、長寿であるという研究結果があり、炎症レベルで老化のスピードも分かると言われています。
僕らは炎症レベルを低くし、健康的な体を手に入れるために、狩猟採集民の生活を見習わなければならない。
実際、彼らと同じような生活をすることは現実的に難しいですが、文明病を防ぐために、石器時代の生活を現代人なりに取り入れるべきなのかもしれません。
「腸」を修正する
炎症の問題を解決するためには前述したとおり、「腸」「環境」「ストレス」を修正する必要があります。
その中でも腸を修正することが、1番効果があるのではないかと僕は思いました。
なぜなら、人間の免疫の7割は腸にあるといわれており、免疫システムと密接に関わりのある炎症を解決するためには、腸を改善させるのが1番の近道だと思ったからです。
なので、ここでは第3章の「腸」について紹介します。
さて、腸には、僕らと共存している生物がいるのをご存知でしょうか?
それは「腸内細菌」です。
腸内細菌は、アミノ酸や食物繊維などを材料にして、ビタミンB群やビタミンKといった重要な成分を合成します。おかげで私たちは、主要なビタミンの欠乏症から免れることができています。
ほかにも栄養の吸収を助けたり、食物繊維を分解してエネルギーに変えたり、脂肪酸を生成して腸壁を守ったりと、その活躍は八面六臂。いずれも私たちが健やかに暮らすために欠かせない機能で、腸内細菌なしでは人体は正常に働きません。(79ページ)
僕らは、腸内細菌の助けなしには生きてはいけません。
栄養の面だけでなく、あらゆる面において、人間と腸内細菌は互いに支え合って生きているといえます。
また、腸内細菌の働きの中で最も大事なものが「外的との戦い」と著者は言います。
善玉菌が腸内に巨大なコロニーを作り、敵に立ち向かうための前線基地を設営。そこで栄養素をもとにバクテリアを駆除する武器を作り出し、腸管からの侵入をブロックするのです。
同時に、腸内細菌は食物繊維から酪酸という脂肪酸を生産し、これで有害物質が体内に入り込むのを防ぎます。腸内細菌がなければ、私たちの免疫システムは攻撃も防御もままなりません。(79、80ページ)
これほど大切な役割を担っていて、外的から守ってくれる腸内細菌は、文明が進むにつれ、減少しているといいます。
例えば、抗生物質を摂取することで、大量の腸内細菌が死んでしまうそうです。
また、私生活において衛生的になり過ぎるのも良くないようです。抗菌グッズなどを使用すると、体にとって良い菌まで殺してしまうため、避けた方が良いとのこと。
菌は化学物質が苦手です。
腸内細菌を減らさないためには、抗生物質をなるべく飲まないようにし、抗菌グッズも使わないこと。
その後に、腸内細菌を増やすための食事を日々意識していきましょう。
具体的には、腸内細菌のエサとなる「発酵食品」や「食物繊維」を積極的に摂取する必要があるとのことです。
納豆、キムチ、味噌、醤油などの発酵食品や、穀物、野菜などの食物繊維を意識して取りましょう。
最後に
今回は「腸」に焦点をあてましたが、この本では、その他に様々な視点から健康について語られていて、非常に勉強になりました。
僕は、この本で学んだことを少しずつ実践していき、「最高の体調」を得るために、まずは腸から修正していこうと思いました。
興味がある方は是非読んでみてください!